福岡物語-45【品川プリンスホテル】
福岡物語(居場所を求めて)-45
大濠公園駅から福岡空港までは地下鉄で20分足らずで着く。
小百合達は11時過ぎには空港に到着し、3人分の搭乗券を購入して伊保を待った。
11時50分になったが、伊保はまだ到着しなかった。
電話をかけると伊保が乗ったタクシーが交通渋滞に巻き込まれていた。
伊保が言った。
「小百合、間に合いそうもない。到着次第乗れる便で行くから、先に行ってホテルのロビーで待っていてくれ。」
「分かりました。3時になったらどうしますか。」
「お前達は女二人だけでしかも事件は初めてだ。必ず俺を待って一緒に永山と会うんだ。」
「じゃあ先に飛行機に乗って、ホテルのロビーで待ってます。」
小百合達は、羽田空港から京浜急行線に乗り換えて品川駅に着いた。
目的のホテルは駅から坂を登った徒歩10分程の所にあった。
ロビーで伊保を待ったが、3時半になっても到着しなかった。
小百合が黒木に連絡したところ、12時20分の便に搭乗したが機材トラブルで発着が遅延したとのことであった。
「どうしましょうか。」
「好きにやれと言いたいところだが、正体のわからん奴だから、必ず伊保を待って一緒に入れ。」
4時になった。
「このまま待ってもいつになるか分からない。部屋に行きましょう。」
小百合は友紀にそう言って立ち上がった。
「本部には言わなくていいんですか。」
「女二人だから待てって言われるのが見えとる。今日はうちらの事件や。相手がいるのが分かっとってそのまま待つのはうちには出来ん。友紀行こう。」
「わかりました。」
二人は、エレベーターに乗り永山のいる最上階のスイートに向かった。
小百合は、電話する代わりに黒木と伊保にメールを入れた。
「敵を目の前にしてじっとしとるわけにはいかん。今から本人に会います。」
「あの、馬鹿女! 黒木は本部室で怒鳴った。」
(相手は一筋縄の男やない。ましてホテルは密室だ。小百合や友紀に万一のことがあったら・・・。伊保、早く着け!)
小百合達がノックして部屋に入ると男が二人いた。
一人は永山、もう一人は両手首に金鎖をしたサングラスの男だった。
永山が名乗り、小百合と友紀も挨拶した。
「こちらの方は?」
小百合がそう尋ねると、その男は言った。
「こちらのお方はだとよ。永山、教えてやれ。」
「東京の友達じゃ。仕事の話をしとった。」
「永山さん、私たちはあなたと話に来たのよ。捜査に協力する気があるなら、この人に一旦引き取っていただけない。」
「なんでじゃ。」
「私たちは、あなたが経営すると認められる会社の脱税の捜査をしています。関係のない方と一緒に調査をするわけにはいきません。」
「あんたらと会うとは言ったが一人で会うとは言っとらん。それに約束した3時から1時間も遅れとるやないか。」
永山が言うことを聞く気配は窺えなかった。
男が笑みを浮かべながら言った。
「男が来ると思っとったが、こんな部屋に女がふたりだけで来るとはな。」
「わしも予想外じゃ。」
小百合は困惑していた。
(どうしたらいいんだろう。友紀を一人ここに残して本部に相談するわけにもいかないし。)
友紀は黙ったままだった。
「こっちの黒いちびは大したことはないが、そっちは上玉だな」
男はそう言って、小百合達をじっと眺めた。
(こいつ、こんなことを言って何するつもりや。まさか。)
黙って立ち尽くしている友紀を見て小百合は心配した。
(まずい状況に友紀を巻き込んでしまった。)
解説
小百合と友紀は、捜査本部の黒木の許可をえることなく独断で永山の部屋に向かいます。
部屋には永山だけではなく不穏な雰囲気の男もいました。
・・・To be continued・・・