横浜物語-1(写真は港の見える丘公園から横浜ベイブリッジを見た眺めです。)
横浜物語(悪魔のロマンス)-1
縁側に面した籐椅子でひとり、ナオミは達也が生前丹精した庭の蝋梅を眺めていた。
霞んだベイブリッジがその向こうに見える。
昨秋の誕生日までは朝夕の散歩をかかさず、健康そのものにしか見えなかったが、その後体調を崩して入院した病院で白血病と診断され、治療体制に入る間もなく敗血症を併発して亡くなったのだった。
娘二人を育て上げ、夫婦二人の生活に戻って早や十年、夫との生活は楽しかった。
深田達也は、大学卒業後ミラノに遊学し、帰国すると北イタリアをターゲットにした小さな旅行会社を始めた。
創業当初は苦労も多かったが、イタリアで積み重ねた交友が功を奏し、小さくとも質の良いホテルと日本人に適した親切なガイドを手配できたことから軌道に乗った。
やがてヨーロッパ各地の旅行を取り扱うようになったが、現地のヒューマンネットワークを大切にし、きめ細かな手配を心掛ける達也の手法は、おざなりの企画旅行に飽きた富裕層に受け入れられ業界でも著名な存在となった。
解説
事業者として成功した夫を亡くしたばかりの夫人が自宅の庭を眺めている姿が物語のスタートです。
彼女はこれから様々な光景を見つめることになります。
序盤の主な登場人物は、ナオミ (遺産相続人)、優一(税理士)、J ( 優一の友人)です。
・・・To be continued・・・