福岡物語-30【由布岳】
福岡物語(居場所を求めて)-30
海老原のクレジットの明細を見ていた松尾は、女物のバッグや靴の購入が多いことに気づいた。捜索に出ていた小百合に聞いた。
「プラダとかあったか。」
「なんのこと。うちに買ってくれると?」
「お前にプラダやら似合わんやろうが。」
「松尾さん、うちに喧嘩売りようと?」
「ばか、この明細見ろ。こういうバッグは海老原の家にあったか。」
「若い娘が欲しがる流行りのタイプやね。家では見らんやった。」
「海老原の手帳と携帯見直して、出金も全部洗え。」
二四歳の事務員が浮上した。マンションの家賃を海老原が振り込んでいた。
小百合に連絡させた。
「ちょっと聞きたいことがあるんやけど、国税局でなくてもいいわ。でも事務所じゃ差しさわりがあるかも知れないから、あなたの部屋で二人きりでお話したいの。」
事務員の部屋にブランド品の鞄や靴が置いてあった。
「このバッグどうしたの?」
「分かっとって聞きようと。」
事務員が不安げに尋ねた。
「うん、だからここにお邪魔したの。」
「事務所の人や奥さんに知れたら困るんやけど。」
「やっぱり内緒なのね。私から余計な話はしないわ。」
愛くるしい顔をした事務員だった。
小百合は、事務員から話を聞いた。
「付けんやったと?」
「酔うと嫌がるんよ。」
中絶を二度していた。
「我儘な人やね。アウス、一人で行ったの。」
「・・・部屋代出してくれとるし、色々買ってくれるけん。」
「もうやめんしゃい。あんた自分が壊れてしまうよ。」
その頃、海老原は松尾に呼び出されていた。
「この明細なに?」
「家族に買ったバッグとかだと思います。」
「家に無かったな。誰に買ったんや。」
「事件と関係ない話じゃないですか。」
「いや、貰った金から出たとも言えるからな。ブランド品結構買っとるやないか。」
「飲み屋の女ですよ。こういうのは喜ぶんです。」
「香織さんは?」
「うちの事務員です。」
「買うてやったんやろ。」
海老原は黙った。
「今うちの職員が会っとる。奥さんは知っとるんか。」
「・・・」
「二度も中絶させたんだってな。一人で病院に行かせたんだって。家庭では良い面して裏では欲望丸出しか。心証悪かろうな。」海老原は困惑した。国税局の女子職員が会いたいと言ってきたことは香織から聞いていたが、そこまで掴まれるとは予想していなかった。
「と言ってもお前は、丸田のことは何も分からんっていうしな。もう一度聞くが、丸田はどこにおるんか。」
「分かりません。どうしろというんですか。」
「少しでも反省して協力する気があるんだったら自分で考えろ。」
「香織の話を妻にするんですか?」
「言う訳ないだろう。ただしうちの職員がこの明細奥さんに示して質問しても知らんぜ。」
「困る」と海老原は思った。
解説
海老原税理士のクレジットカードの明細から予期せぬ展開が始まりました。
・・・To be continued・・・