横浜物語-28【東京湾フェリー】
横浜物語(悪魔のロマンス)-28
法廷を出た後、優一が、
「なんで突然あんなこと言ったの。」
とJに聞いた。
Jはしばらく黙っていたが、
「言い方が癇に触った。」
と答えた。
「ナオミさんが言ってることは正しい。彼女は堂々としているけど僕は逃げに入ってる。」
「優、決めた方針を貫くんだ。なにごとも中途半端はだめだ。自分で決心したら、そのとおり進め。」
「そのつもりだ。でも負けて収監されるのが怖い。」
「勝負したら、結果は受け入れなきゃいけない。」
「僕は弱い人間だ。」
「そう考えるな。裁判はまだ終わってない。」
「君は僕に隠してることはないよね。」
「何故そんなことを言う。」
「君とナオミさんが同じような人間に見えてきたから。」
「彼女は当たり前のことを言ったに過ぎない。」
(・・・きっと母はお前をずっとどこかで見てたんだろうな。今は母の気持ちが分かる。お前が気になっていたはずだ。)
「今日はひとりで飲みたい。」
優一は、そういうと横浜の街に消えて行った。
収監を怖れた優一は、深酒に浸った。
話を聞いたJが助言した。
「酒ばかり飲まずに女達と楽しく遊べ。その方が気晴らしになる。」
「俺は一人では何もできない男だ。刑務所に入る勇気もない。」
「耐えろ。実刑になると決まった訳じゃない。」
「判決が出たら、君に見てもらいたいものがある。」
「今じゃなくて良いのか。」
「今は見せる勇気がない。その時が来たら頼む。」
検察官の論告及び求刑と最終弁論が済み、遂に判決の日となった。
租税法学者の論文も弁護士の弁論も結局役には立たなかった。
優一は、既に分離審で宣告されていたナオミの量刑と同じく懲役1年の実刑を宣告された。
ナオミは判決を受け入れ、優一の弁護士は即日控訴の手続きを取った。
解説
優一の裁判の結果は、彼が恐れていたとおりの実刑となってしまいました。
・・・To be continued・・・