福岡物語-28【福岡城址】
福岡物語(居場所を求めて)-28
その夜、龍雄達三人は話し合った。
「丸ちゃんが、連絡してくれたおかげでなんとか切り抜けた。配達予定だったゴールドバーは、大阪に連絡して引き取らせたし、手持ちのバーは直ぐにホテルの金庫に仕舞った。崔さんにも事情を話して取引をストップさせた。昼から奴らは俺の家にも来たようだが、元々大したものは置いとらん。」
「龍ちゃんの姉さんには、えらい迷惑かけたな。」
「・・・そうだな。しかし姉ちゃんも雄一も喋らんはずだ。」
「取引は当分出来ん。龍ちゃん、韓国にでも行ってしばらく気晴らしするか。」
「韓国はやめましょう。渡航履歴が残ります。やつらがその気になれば、韓国の検察を通じて私たちを捜すでしょう。こっちで大人しくした方が良いです。それより一番気がかりなのは、龍雄さんのお姉さんが矢面になりそうなことです。」
「姉は何も知らんし、薄々分かっとったとしても何もしとらん。」
「攻める窓口がお姉さんしかない以上、奴らは諦めないでしょう。我々と違ってお姉さんは身を隠せませんから。」
丸田は海老原への追及の状況を説明した。
「海老原は機転の利く男です。係官から私に電話するように言われた際、国税局が急に来たと言ってくれたので、マルサだと察知できました。早い段階でお二人に連絡できたのは、その連絡があったからです。国税局に連れていかれた後、こっちから渡していた現金の出処について、だいぶ粘ったようですが、私が渡した裏金だと喋らされてしまいました。係官は追及する際、かつての後輩を目の前に連れてきて、この男の前で嘘がつけるのかと怒鳴ったそうです。」
龍雄が、
「奴らが目星を付けとるのは誰かな。」
と聞くと、丸田は、
「龍雄さんと私です。顔写真を手配して探し回るはずです。」
と答えた。
「俺はどうじゃ。」
「真ちゃんは当分大丈夫だと思いますが、奴らが持って行った雄一さんの携帯電話に履歴が残っているかもしれませんから、用心する必要があります。」
「龍ちゃんの姉さんを、これ以上苦しい立場に追い込むことになったら申し訳ない。その時は、俺が出て行って始末をつける。」「岩ちゃん一人にそんなことはさせん。」
「しかし、堅気の会社員と所帯を持っとる姉さんに迷惑をかけるわけにはいかん。」
「気持ちは有り難いが、姉ちゃんに社長を頼んだのは俺だ。いざとなったら弟の俺が出るしかない。」
解説
龍雄、岩佐、丸田の三人が相談している場面です。
丸田は礼子が捜査の矢面に立たされることになると話します。
・・・To be continued・・・